2014年04月06日

第5回:ミュージカル「WICKED」

ミュージカルWICKED。
「オズの魔法使い」の裏話、また後日談として、
悪い魔女・エルファバと良い魔女・グリンダの友情を描いている作品である。
「雪とアナの女王」で「Let It Go」を歌うイディナ・メンゼルは
このWICKEDでトニー賞を受賞している。
日本では現在劇団四季で上演されているので、機会があれば観に行かれることをおすすめしたいが、
なかなか劇場は敷居が高い、という方は
まずはブロードウェイ版・四季版のそれぞれのサントラを聴いてはいかがだろうか。
次々と繰り出される美しいメロディとコード進行の魔法に触れてみて損はない。

物語は、オズの魔法使いを知らなくても楽しめるとは思うが
ブリキ男、カカシ、猿、またドロシーや臆病なライオンなど、あの世界のキャラクターが次々出てくるので
やっぱり知っていたほうが楽しめる。
…日本でWICKEDがいまいち根付かなかったのは、
オズの魔法使いを知らない人が多いから説があったが本当だろうか?

誰からも愛されたけれど、唯一自分が愛した人には愛されなかったグリンダと、
誰からも愛されなかったけれど、唯一自分が愛した人に愛されたエルファバ。
いったいどちらがが幸せなんだろう。
いったい何が悪で何が善なのか。
日本では劇団四季が上演しており、私も日本初演は数回観に行った。
(何を隠そう濱田&沼尾コンビファンであった。)
2回目以降の観劇で、プロローグの「Good News」を聴き、その真の意味に気づいた時。
初見ではその曲の美しさやアンサンブルのパワーで泣かされたこの曲の歌詞の本当の意味に気づいた時、涙が止まらなくなった。

このミュージカルが素晴らしいのは、練られた脚本に加え
スティーブン・シュワルツの音楽によるところが何よりも大きいのだが
(これは前回書いた通り)
しかし今回は音楽ではなく、前回予告した通り、日米の反応の違いについて触れてみる。

物語序盤、緑色の肌の女の子(エルファバ)が誕生するシーン。
日本の反応は---少なくとも、私が四季を観に行った数回に関していえば、
"とんでもない悲劇が起きてしまった"と観客の空気は静まるのだ。
深刻な事態が起きてしまったと受け止める。シリアスだ。

ところが。
以前、ブロードウェイ版の同シーンの観客の反応を見たときに驚いた。
なんと、緑色の女の子が誕生した瞬間、観客は大爆笑に包まれたのである。
実はこの作品、いわゆる肌の色の差別問題も裏に隠されているわけで
そこから来る反応の違い?
日本で、あのシーンで笑いが起きたら、きっと白い目で見られるだろうし
私にはまったく理解できない感覚。
どちらが良い悪いではなく、きっとこれが文化と思想の違いなのだろうと、
非常に興味深く感じた出来事であった。

日本での初演でエルファバを演じたのは、すでに四季を退団された濱田めぐみさん。
彼女の歌声もまた素晴らしく…
できれば「Let It Go」の濱田めぐみ版を聴いてみたいと思う今日この頃である。

WickedWicked
Stephen Schwartz

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ミュージカル「ウィキッド」劇団四季版ミュージカル「ウィキッド」劇団四季版
劇団四季

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posted by sumi at 18:19| Comment(0) | 音楽日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月15日

第4回:映画「アナと雪の女王」より「Let It Go」

この曲をテレビで聴かない日はないのではないか、と言っても過言ではないくらい
ここ連日耳にしている「Let It Go」。
ミュージカルナンバーはこうでなくっちゃね、という久々のストレートでキャッチーなメロディに私もすっかり虜になってしまい、気づけば頭の中で歌っている今日この頃。
いくつかバージョンがあるようだが、今回は原曲にスポットを当てる。

原曲の「Let It Go」を歌うのは、ブロードウェイのミュージカル女優で有名なイディナ・メンゼル。
私の中ではイディナ・メンゼル=ミュージカル「WICKED」の"エルファバ役"だ。
彼女はこの役にて、かのトニー賞を受賞している。
"オズの魔法使い"の裏話にあたるWICKED、私も日本での劇団四季版を何度か観劇したが
ストーリーもさることながら、スティーブン・シュウォルツが手がける各ナンバーがとにかくポップでキャッチー、そして繊細かつパワフル。
自分が来てほしいところに必ず来てくれるそのメロ&コード進行&アレンジ構成にはカタルシスさえ感じるほどで、私の好きなミュージカルのTOP3に入っている。

本当は、彼女の代表作でもある、これまたしょっちゅうテレビから聞こえてくるミュージカル「レント」にも触れられれば良いのだが(こちらは缶コーヒー「FIRE」のCMで主題歌が使用されている)
さすがに主題歌だけは知っているが、話は見たことがないので語ることができない。
話をまったく知らないのに、曲だけで泣けてくるほどツボな作りではあるのだが・・・。
(個人的主観で申し訳ないが、舞台・ドラマ問わず、どうもアメリカの若者の群像劇に若干の苦手意識がある)

話を戻して「Let It Go」。
緩急、感情のゆさぶりや歌い上げるときのパワーはさすがイディナ。

また、サビのコード進行に関しては
Ab-Eb-Fm-Dbのあとの
Cm7-Cb(B)-Dbがたまらなく良い。
このサビの〆方が嬉しすぎて顔がニヤけてしまう。

しかし、そもそも「アナと雪の女王」は日本では昨日公開されたばかりのため、
現時点で話の内容をまったく知らない。どういうときに歌われるのだろう?

今調べたところによると
人々に自らの魔法を知られてしまったエルサが、王国から逃げ出した直後の場面でこの曲が流れ、もはや自分の意思で抑えることが出来ないほど強大な魔法を持つエルサが、幼少期以来ずっと抑えられてきた障害から解放され、何にも恐れずに魔法が使えることを歓喜する。(wikipediaより)
時に歌う歌だそうだ。

・・・CMでこの女の子の映像ばかり見ていたので
この子がアナだとばかり思っていましたよ。(同じ人は手を上げて!)

しかしこれでなるほどと納得。
話の筋をまったく知らないながら、この曲を聴く度に、自分の魔法が認められ、希望と歓喜に満ち溢れるエルファバが歌いあげる「The Wizard and I」を思い出していたのだ。
やっぱりこれは、イディナ効果?

もうひとつ、テレビで見て面白いなと思ったこと。それは、アメリカの映画鑑賞スタイル。
アメリカでは、映画館で、大人も子供も一緒に「Let It Go」を合唱しながら鑑賞するのだそう。
日本では…もしかしたら、一緒に歌いながら鑑賞することが決まりごとになるような映画もあるのかもしれないが…一般向け映画ではまず見られない光景だと思う。
文化の違いって、非常に興味深い。

日本とアメリカの観劇の際の反応・文化の違いに関しては、実は以前「WICKED」でも感じたことがある。
イディナつながりで、次回はWICKEDのお話。


公式動画なので、今回は紹介。
『アナと雪の女王』特別映像:「Let It Go」/イディナ・メンゼル


アナと雪の女王 オリジナル・サウンドトラックアナと雪の女王 オリジナル・サウンドトラック
V.A.

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posted by sumi at 09:17| Comment(0) | 音楽日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月02日

第3回:シューベルト「軍隊行進曲」

現在「ほけんの窓口」のCMで使われているのは、シューベルト作「軍隊行進曲」。
正しくは「『3つの軍隊行進曲』より第1番」。

動画はこちらから
ほけんの窓口CMギャラリー

もともとはピアノ連弾のための曲だったそうなのだが、
今回使用されているのはこれのオーケストラ版である。

軍隊行進曲。
これは個人的にかなりのトラウマの曲だ。

時は中学1年生。
エレクトーンは5歳から習っていたが、将来を見据え、この年からピアノも習うことにした私。
ピアノの先生は、この世の中にこんなに美しい人がいるのだろうか…と
女の私でさえもつい見惚れてしまうくらいの女性で
(しかもとんでもなく優しく、演奏も教え方もうまかった!)
毎週のレッスンは非常に楽しみだった。
「たおやか」という表現が一番ぴったりかもしれない。
こんな素敵な大人の女性になりたい、と思ったものだ。
…思っただけで終わりました。

閑話休題。

直面したのは、エレクトーンと全く違うピアノの鍵盤の重さの問題。
当時、エレクトーンですらタッチの弱さを指摘され続けていた私が
ピアノの音をまともに出すのは至難の業。
どう頑張っても、先生が奏でるピアノの音が鳴らないのだ。
最初は、クラスの合唱の伴奏を担当していたため、その曲などを習っていたが
(曲は確か合唱の定番「消えた八月」)
ピアノを習い始めたその年に、いきなり発表会に出ることになる。
そしてそのとき先生が用意した曲が、この「軍隊行進曲」であった。

腱鞘炎になりそうな勢いで練習するも、自信が持てない。
今考えてみれば、多分弾けていたのだ、中1の子が普通に弾ける程度には。
ただ、エレクトーンの演奏ではまあまあ持てていた自信が、ピアノではどうしても持てない。
その自信のなさから、発表会当日物凄い腹痛を起こし……
結果。
発表会を欠席した。

発表会に出なかったのは、後にも先にもこの1回だけ。
人間嫌なことがあると本当に腹痛を起こすんだ、と妙に冷静に思ったことを覚えている。
休むことで気が楽になったつもりだったが、それは一瞬のまやかし。
欠席を伝える母の電話口の声と、翌週の先生の寂しそうな顔は今も忘れられない。
とてつもない反省と後悔を伴う苦い思い出となった。

コムコムミュージックスクールでも、そろそろ発表会の季節です。
こんな馬鹿なことはしないよう、生徒の皆さんは日々の練習は勿論
自信とハッタリを見につけましょう。
後者の2つ、割と大事です。
(…と自分に言い聞かせる)

いつの日か、「軍隊行進曲」のピアノ独奏にもう一度挑戦してみたい。
もしも弾けるようになったら、胸の奥の苦い棘も、溶けて無くなるだろうか。

・・・余計に深く刺さったりして。


軍隊行進曲~シューベルト:4手のためのピアノ作品集軍隊行進曲~シューベルト:4手のためのピアノ作品集
シューベルト レヴァイン(ジェームズ) キーシン(エフゲニー)

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posted by sumi at 21:26| Comment(0) | 音楽日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする