2014年06月02日

第8回:サウンドロゴ

数日前の夕暮れ、近所を散歩していたときに聞こえてきた豆腐屋のラッパ音。
久々に聴いたその懐かしさに、思わず音を追いかけて角を曲がる。
目に飛び込んできたのは、白いトラックと、その窓から見え隠れするラジカセ。
竿竹屋やリサイクルショップのトラック同様、販売車から録音されたラッパ音を流していたのである。
あまり口にはしたくないが、思わず「時代は変わったな」と感じた一コマであった。


ところで、「サウンドロゴ」という言葉が確立されて久しい。
Wikiによれば
サウンドロゴ (sound logo) とは、企業が、CMなどにおいて、
自社の呼称や商品名などにメロディを付けたりあるいは音声や効果音などの音響でアピールして宣伝効果を高める、これまでになかったブランド手法である。

だそうだ。

たとえば、食品メーカーのサウンドロゴを思いつくまま書き出しても
「ナビースコ(♪ラドー ラド)」 「グ・リ・コ(♪ラソソ)」や 「チョーヤ(♪ソー ド)」など
耳になじみがあるものが多いだろう。
(ちなみにこの3曲はすべて女性コーラス)

歌詞のない、ほんの数音のみで企業をイメージ付けるサウンドロゴも多い。
例としては、シロフォンのような音で「ド#ファ#ド#ソ#」と鳴る、インテルのサウンドロゴ。
・・・歌詞がないものの場合、その音色も強く記憶に結びついているはずなので、
字面にすると非常に分かりにくい点は申し訳ない。

最近では、ファミリーマートが初音ミクを起用し、
店内に入るときの「♪ド#ラミラシミーミ シド#シミラー」
という曲に「ファミファミファミーマ ファミファミマ」という歌詞をつけたことがある。
現在は、歌詞はなくなり元に戻ったが
これ以降、入店するたびにこの歌詞を頭の中で再生してしまうのは…私だけではないことを祈りたい。
ともかく、サウンドロゴというのは身近に溢れかえっているのだ。


そう考えると、豆腐屋のラッパというのも一種のサウンドロゴと呼べるのではなかろうか。
歌詞はなく、ほんの2音のみのシンプルな音楽。
誰が聞いてもすぐに豆腐屋と分かり、頭の中には「とう〜ふ〜」と商品名が歌詞で浮かぶ。


あれはまだ、私が保育園か、小学生の頃。
夏の夕暮れ時に、ほぼ毎日聞こえていた音だ。
使い込まれた真四角の木箱を荷台に乗せた自転車にまたがり、錆びれた金属のラッパを吹きながら、
豆腐屋のおじさんが現れる。
ラッパ音が聞こえれば、母から50円と金属のボウルを渡され、
家の前で待っているおじさんのもとへ急ぐ、小さな私のお使い。

硬いツバのある帽子から見え隠れしていた白髪混じりの黒髪は、いつしか真っ白になった。
あのおじさんが来なくなったのは、幾つの時だったか。

ふとそんな幼き日の風景を思い出し、それがトラックに変わった今を思う。
それでも、きっとこの先も、あの音だけは変わらないだろう。

次にあのトラックに出会えたら、豆腐を買おう。
だけどもしできたら、その機会は、少しだけ涼んだ夏の夕暮れに訪れてほしい。
私の勝手な我侭である。


posted by sumi at 21:45| Comment(0) | 音楽日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月15日

第7回:エレクトーンとピアノの違い?

前回の話題と少々関連する。

昔から毎回答えに詰まる質問がある。
それは「エレクトーンって、ピアノと何が違うんですか」。

先日、営業課Aさん(仮)とお昼ご飯を食べていたときのこと。
A「○○さん(私)はピアノ出身ですか」
私「エレクトーンなんです。ピアノも習っていましたが…」
A「エレクトーンって、ピアノと何が違うんですか」

そら来た。
さてどうしよう。
すぐに伝わる分かりやすい違い。
数秒の間の後、私の口から出た答えは…

「・・・足がある」

なんだそれは。
我ながら情けない。

最終的には、エレクトーンはシンセみたいなものでピアノとは全然違うのだと
なんとか収めてはみたものの
相手の表情からするとまったく納得していなかった模様。

さて、この「エレクトーンってピアノと何が違うんですか」という質問。
稀に「エレクトーンって、ピアノと" 何か "違うんですか」という変化球もあるにはあるのだが
エレクトーンを知らない人に、こう聞かれたときのスマートな回答があれば
ぜひご教授願いたい。


posted by sumi at 02:24| Comment(0) | 音楽日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月20日

第6回:番外編「月曜から夜ふかし」 エレクトーンVSピアノ!?

毎週月曜夜に日テレで放送されているバラエティ番組、「月曜から夜ふかし」。
この番組はもともと凄く好きで、見られない日は録画するほどである。
その中でも、3/31放送分は非常に興味深かった。
なんと、久々の(?)エレクトーンの地上波登場である。

コーナー名は「ブームが去ったものを調査した件」。
これに登場したラインナップが、「エリマキトカゲ」「エレクトーン」「原稿用紙」「100円おみくじ機」であった。
小学校低学年の運動会で「エリマキトカゲ音頭」を踊り、当時家族でデパートに買い物に行けば、昼に入るレストランのテーブルで必ず100円の星占い機を目にし、小中高と読書感想文コンクールの常連だったおかげで原稿用紙には何百枚とお世話になった自分からすると
このエントリーは懐かしくもあり、切なくもある。

考えてみれば、私が子供の頃には、毎週日曜の朝にテレビ朝日で「ヤマハジュニアオリジナルコンサート(JOC)」が放送されていたし、これまた小中高の音楽室には必ずエレクトーンが置いてあった(もちろんレバー式)。NHK教育テレビをつければ、後ろでエレクトーンを弾くお姉さんの姿が目に入る。
一般人がエレクトーンを目にする機会が多かったことを思うと、
今、エレクトーンがこのラインナップに加えられてしまうのも已む無し、というところであろうか。

以下はコーナーの概要。

・1959年に発売されたエレクトーンは累計480万台販売されている。
・80年代にブームとなり、一時はピアノの人口を超えたこともある。

ブームになった背景として
・未来的で夢を持たせる楽器であったのでは?
・脳の活性化ができることで習わせる親が多かったのではないか。
・ピアノより鍵盤が軽く子供でも弾きやすい。
と理由を探る。

ところが、現在の売り上げ台数は全盛期の1/10(財団法人ヤマハ音楽振興会 広報室調べ)
ここから「なぜエレクトーンブームが去ったのか」というテーマをもとに
エレクトーンVSピアノ、という流れとなる。
ピアノは女性の先生、そしてエレクトーンは、エレクトーンプレイヤーの鷹野雅史氏により
双方の主張が対決、展開される。

ピアノの先生の主張は、
・鍵盤の軽さが原因のひとつ。その後ピアノを弾くと重く感じる。
・習わせるならピアノという考え方もあったのでは?
・右と左を起用に動かすピアノの奏法はエレクトーンだと物足りない。
・ピアノはクラシックだけでなく、ポピュラーもなんでも弾ける。ピアノで弾くと何でも素敵。

これに対し、エレクトーンの鷹野さんは
・鍵盤の軽さが直接の原因ではなく、習い事が多様化したからだと思う。
・右と左だけでなくプラス足なので、面白みが増す。
と返す。
そして最後に「ではエレクトーンの今をお見せしましょう」と
鷹野さんによる「パイレーツ・オブ・カリビアン」のSTAGEA演奏をバックに
「エレクトーン再ブーム到来の日も近いかもしれない」というナレーションで締める、といったものであった。

バラエティとしては、非常に面白い作りになっていて、私も笑いながら見てしまったが、
リアルタイムのツイッター上では、エレクトーン側の「悲しい」という声が多数あったのも事実。

ちなみに"習い事が多様化したから"というのは、我がコムコムミュージックスクールの社長も
よく口にしている。
これは本当にその通りで、例えば、少なくとも私が小学生の頃の習い事といえば
ピアノ、そろばん、書道、エレクトーンが四天王状態であった。
しかし今はどれも数ある選択肢の一つに過ぎない。

ピアノにはピアノの、エレクトーンにはエレクトーンの良さがある。
それはけして対立するものではなく、共存するもの。
多様化に通じることでもあるが、世の中にはピアノやエレクトーン以外にも無数の楽器がある。
自分を一番表現できるものに出会えたなら、それは凄く幸せなことなのだ。
多分私は、それがエレクトーンだった、それだけのことだ。

全盛期より人口が激減しているとはいえ、まだまだ習う人が多いのもエレクトーン。
つい先日も、エレクトーンSTAGEA新シリーズの「ELS-02」が発売されたばかり。
そして、どんな形であれ久々にエレクトーンが地上波に登場し、その「今」を多くの人に見せることができた。
これを機に、エレクトーンに興味を持ってくれる人が増えてくれることを祈りつつ
チック・コリアのピアノの音色に耳を傾け微睡む休日である。

チック・コリア・ソロ Vol.1チック・コリア・ソロ Vol.1
チック・コリア

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Pirates of the Caribbean (Original Soundtrack)パイレーツ・オブ・カリビアン(オリジナルサウンドトラック)
Original Soundtrack

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posted by sumi at 16:18| Comment(0) | 音楽日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする