2015年11月10日

第15回:再ブレイクなるか?access(浅倉大介/貴水博之)サウンドのキラキラ感をコードから分析してみる

だいぶ前の話ではあるが(…主にブログの更新をさぼっていた私のせい)、9月末の「有吉反省会2時間スペシャル 超豪華アーティスト集結するも一切歌わない有吉音楽祭」(日本テレビ)を見た方はおられるだろうか。
access、DEEN、GAO、ISSA、PENICILLIN、m.c.A・T…と、とある世代にはたまらないラインナップとなっていた。(タイトル通り、誰も歌わないのだが)
今回はこの中で、accessのサウンドについて少し勝手な分析をしてみたいと思う。

浅倉大介と貴水博之によるユニット、access


accessは1992年にデビューした、キーボードの浅倉大介とボーカル貴水博之によるユニット。詳しい来歴はWikiあたりをご覧いただくとして(ひどい!ぶん投げた!)、そのサウンドはよく「キラキラ感」と形容される。
恐らくそれはシンセ使いの神でもある浅倉氏が生み出すサウンド、またその間を突き抜ける貴水氏の稀有なハイトーンボイスの融合、という部分が大きいのだが、個人的に、浅倉大介氏がかなり巧みなコード進行を仕掛けていることもまた一つ起因しているのではないかと思うのである。

きらめく分数コード


そもそも分数コードとは何ぞや。
ポップスのバンドスコアなどを見ていただくと、かなりの頻度でC/Dなどの表記を目にすると思うのだが、要は分数のように表記されるコード。…かなり雑な説明ですね。偉い人に怒られそうだ。
分子部分がコードで、分母がベース音にあたる。
 ※ヤマハ式のコード表記は「コード音onベース音」となる(G on Cなど)
通常は、コードのルート音がベース音(Cのコードのベース音はC)だが、ルート音ではないベース音を演奏する場合に、この分数コードの表記となるわけだ。

というわけで、以下サンプルをいろいろ作ってみました。ベタ弾きですみません。
chromeの場合は、真ん中の大きいバナーのPLAYボタンクリック→再生バー右側のPLAYボタンで再生できます。


例)通常のコード
C→D→E→F


例)分数コード
C/D→D/E→E/F#→F/G


闇雲に使うものではなく、実際使用する際にはその流れの中にもちろんちゃんと意味があるし、有り体に言えば「おしゃれになる」効果などもあったりするが、分数コードが入ることによって、私はその刹那、光を感じるのだ。そこで生まれる緊張感、浮遊感、高揚感がなんともたまらないのである。
("分数コード友の会"を作りたいくらい、分数コードが大好物です。余談ですが、DIMENTIONとかが大好きです。)
そして浅倉大介氏は、実に巧みにその分数コードによる魔法のようなキラキラした効果を楽曲に組み込んでくるのだ。

「 Vertical Innocence 」の巧みなコード使い


2014年に発売されたシングル「Vertical Innocence 」

※動画の使用に問題がある場合はご連絡ください。削除いたします。

この曲のサビ(0:57〜)のコードを少し分析してみる。
「コード感」で語るのであれば、4小節ごとに「AbM7」と「Cm7」が入れ替わる。これが一つ、大きな流れ。
AbM7とCm7


ただ、ここのシンセブラスのフレーズのみ取り出してみると(これこそベタ弾きで申し訳ない)、
Bb/Ab→AbM9(もしくはBb/Ab→Cm7/Ab)と Bb/C→Cm7が矢継ぎ早に繰り出される。
さあ、分数コードですよ。

この上にさらにボーカルと何声にも渡るコーラスが乗っているにもかかわらず、コード感のAbM7とCm7は保たれたまま。
曲全体のコードというところからすると、結局は「AbM7とCm7だ」という解釈もあるとは思うが
今回は分数コードという解釈でスポットを当ててみた。
この曲の独特の浮遊感と高揚感は、一つこの巧みな分数コード使いにあるといっても過言ではないと、思う。…多分。

サビ前の分数コードの魔法


1曲だけだとなんなので、その他の曲にも触れてみる。
もう一つ特徴的なのが、サビ前のコード進行に分数コードを入れるパターン。
たとえば、「SCANDALOUS BLUE」のサビ前。このコード進行は美しすぎる。キラメキ、高揚感、緊張感、せつなさの表現が巧み。手を放していくように見せかけて、一瞬微笑み(これが分数コードの効果と解釈する)、最後にぐっと引き寄せるのだ。

F#m7→EM7→DM7→A/B→G#



また「CATCH THE RAINBOW(Pray for Japan )」のサビ前。これは気持ちいい。
分数コード大好き人間からすると垂涎ものです。
このコード進行の煌びやかさ。キラメキと高揚感溢れてたまらない。まさにサビに向けての音楽の虹だ。

Em7→A/D→G/C→A/B→GM7→A7


と、ここまで書いておいて今更だが、こんな短いフレーズだけを取り出しても意味がないのだ。
イントロからアウトロまで、全体のストーリーがあって初めて光を放つものだから。

今回いろいろ聴いてみたが、どの楽曲も、本当にコード進行が綺麗。天性のものに加えて、おそらくすべて計算されつくしているのだと、思う。
おそらく根底にあるのはクラシック音楽なのだろう。それも古典の。にもかかわらず、そこに乗るのは最新のデジタルサウンド、というのがきっとまた魅力なのだ。

音圧と音質について


少しだけこれに触れてみようかな。
数年前の音楽業界は、とにかく音圧を上げたい派と、音圧を上げりゃいいってもんじゃないだろ派に分かれていたような部分もあって、最近は少しそれも落ち着いてきたようにも思うのだが、しかしやはりいまだ音圧を上げるのが第一で、音が歪みすぎてもったいないなぁと思う曲も溢れていたりする。
この秋に出たaccessのニューシングル「Winter Ring Affair」と「GLAMLOID」は、itunesなどの配信無しでCDのみということで、この時代にかなり思い切ったことをしたなぁと感じていたが、CDを聴いてその意味も気持ちも痛いほど分かった。
これだけ練りに練りこんで作り上げた音を、配信によって1bitたりとも潰したくないのは当たり前だ。(そもそも制作段階からCDに落とす段階でつぶれるのだから。よってハイレゾ配信希望します。)

結局のところ、誰よりも音圧を上げながら誰よりも質の良い音を作り出すのが浅倉大介なのだ。そしてそれは、通常これだけ音が重なると埋もれがちになるところ、その音の間を融合しながら突きぬけていく貴水博之のボーカルあってこそ。
accessはそんな唯一無二のユニットなのである。

DTMにアクセス!


最後に。
DTMをやってみたいな、でも何からはじめればいいんだろう。と思う方は、まずは好きな曲の耳コピをすることをおすすめしたい。
好きこそもののなんとやら、好きな曲をまず真似することが上達への近道。
といってもイントロからやりだすと、先が見えず途方にくれることになるので、たとえばサビの30秒だけ、というように時間を区切ると良い。
最初はメロだけでもいい。
次はベース、ハモ、コード。そしてドラム。如何に原曲と同じフレーズを再現するか試行錯誤することが大事。
プラス、それぞれの楽器の知識も大切です。
でも、好きなことを勉強するのは楽しいのだ。
いきなりaccessのような分厚いサウンドに手を出してみるのも良し、最初は編成の少ないものを選んでみるのも良し。前者は挫折するかもしれないが、それもまた勉強。

そうそう。
最近だと、ボカロをやってみたい、という入り口からDTMを始める方もかなりいると思うのだが
なんと、初音ミクの源流は、accessなのだそう。
先日のMusicPark2015にて、開発者の佐々木渉さん(クリプトン・フューチャー・メディア)が語っておられた。
ミクが高い声のボーカロイドになったのは、ご自身が中学生の頃にaccessファンで、貴水氏の高い声の魅力と、浅倉氏のキラキラしたシンセ音(特にDX7やEOSの高音の美しさ)に衝撃を受けたことがきっかけなのだと。
DTMでaccess、いかがですか。

Winter Ring Affair(X盤)Winter Ring Affair(X盤)
access

by G-Tools


posted by sumi at 17:21| Comment(0) | 音楽日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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